機械加工の加工精度を高めるための対策について

この記事は,機械加工の加工精度を高めるための対策についての個人的な意見を書いたものです.
何年か前に書いたものなのでかなり読みにくいかもしれませんが,参考になるようでしたら幸いです.注意点として私個人の意見が多分に含まれていることをご了承下さい.文字数は5,000字以上あります.
誤字脱字を発見された方は連絡していただければ助かります.

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※画像はPixabayより.



 加工精度には,寸法精度,形状精度,表面精度がある.中でも最も理解しやすい寸法精度について考える.これは設計寸法と製品寸法との差であり,差が小さいほど寸法精度が良いといえる.例えば製品になる工作物を工作機械の回転主軸に固定し,別の位置に工具を固定したとする.回転する工作物に工具を切り込んで加工すると切りくずが出て,残っている部分が製品になる.この際工作機械が,例えば熱変形すると工具刃先と工作物の相対位置が予定と異なってくるため,切り込み量が予定の値と異なってしまう.その結果得られる製品の寸法が予定の設計寸法と最終的に異なってしまう.すなわち寸法精度が悪くなってしまう.熱変形以外にも様々な要因が存在する.以下,機械加工の加工精度を高めるための対策としてどのような方法があるのか,順に力変形,熱変形,工作機械の運動精度,工具摩耗,加工歪を関連させて記す.
 まず機械加工の加工精度を高めるための対策として力変形を考える.結論からいえば,力をうまく変形させることで機械加工の加工精度を高めることができる.力をうまく変形させる例としては,構成刃先の発生やびびり振動が発生しないような切削条件を選ぶ,工作物の両側から工作する(これは「平面切削法」と呼ばれている),送りを小さくして切り込みを分割する,推定変形量だけ控除した切り込みを与える,などが主に挙げられる.
 延性材料であるアルミニウムあるいは軟鋼などを比較的低速度で切削すると切削部分での被削材の物理・化学的変化により被削材の一部が刃先に付着し,あたかも新しい刃先が出来たように振る舞う.これを構成刃先と呼ぶ.この付着物は加工硬化されて硬く,切削工具の刃先にかわって切削作用する.この状態で切削を継続すると構成刃先はさらに成長するが,ある程度大きくなると切削力に耐えることができなくなり構成刃先は脱落する.しかし切削部分での条件が変わらない限り構成刃先は再度発生し,また脱落・再生の過程を繰り返す.構成刃先が発生しないような切削条件を選ぶことで,この影響を抑えることができる.構成刃先の存在によって加工時に不本意な力が生じ加工精度が落ちるため,これをなくすことで,すなわち力を変形させることで,機械加工の加工精度を高めることができるはずだ.
 びびり振動とは工具と被削物の間で継続的に発生する振動のことを指し,その振動発生の要因から強制びびり振動と自励びびり振動に大別される.びびり振動が発生すると被削物上に振動に対応した痕跡が残り仕上げ面を悪くする.また,この時異常な振動音が発生し,工具を損傷させる原因となるばかりでなく工作機械の一部を破損させることさえある.強制びびり振動は切削系のどこかに振動源があり,その影響をうけて発生する.振動源としては工作機械内部にある駆動装置の振動,フライス加工における断続的な切削力,あるいは工作機械外から伝わってくる振動などがある.一方,自励びびり振動は特定の振動源がなくても工作機械の動特性と切削過程が重なって,ある条件を満たしたときに発生する.重切削や,高速切削の時に発生しやすい.びびり振動が発生しないような切削条件を選ぶことで,これらの影響を抑えることができる.びびり振動によって加工時に不本意な力が生じ加工精度が落ちるため,これをなくすことで,すなわち力を変形させることで加工精度を高めることができる.
 他にも工作物の両側から工作したり,送りを小さくして切り込みを分割したり,推定変形量だけ控除した切り込みを与えるなどといった方法でも加工精度を高めることができる.いずれも加工時にかかる力を変形させることで精度を高めようとするものである.
 次に,熱変形が機械加工の加工精度に及ぼす影響を考える.工作機械はその運転による熱発生のため,おのずと加工精度の低下を招いている.
 従来技術では,発熱箇所近傍を強制冷却する装置を設置し,工場内の精密な空調により加工精度を保持してきた.しかしコスト高でエネルギー節約の面からも課題が多く残っている.特に大形工作機械の大物加工ではワークと機械の双方が大きいため機械温度1℃あたりの熱変形量も大きく,加工精度に大きな影響を及ぼす.そのため高精度加工を実現するためには大形工作機械の機械内外の温度変化に伴う機械の熱変形を低減することが課題であり,主軸と機械本体の両面からの対策が必要である.従来の熱変形補正は主軸の発熱量に応じた熱変形量を補正することで熱変形補正精度はある一定のレベル以下であった.しかしこの熱変位補正精度は加工精度の要求レベルに対して不足しているため,主軸軸受の発熱を効率的に取り除き,主軸の熱変形補正精度向上を図る必要がある.また汎用工場下での高精度加工ニーズに対応するため,1日の温度が大きく変動する環境下でも熱変形しにくい構造及び安定した高精度加工を実現する必要がある.
 前述したが熱変形を抑える具体的な方法としては,切削油剤などで工具や工作物を冷却する,冷却装置などで工作機械の発熱部分を冷却する,などといった方法がある.他にも切削中の発熱による工具の熱膨張を予測し,これを補正することにより加工精度の向上を図るといった方法もある.これについては,現在では,切削条件の変化につれて変動する熱変位を正確に予測するため切削条件と切削熱による工具の熱膨張を関係させ工具の切込みを補正し寸法精度を管理するといった補正プログラムも開発されている.
 総じて,熱による変形をできるだけ抑えることで機械加工の加工精度を高めることができるといえる.
 次に,機械加工の加工精度を高めるための対策として工作機械の運動精度を考える.そもそも機械工作及び機械加工とは工作機械,工具,工作物といった三つの要素が三位一体となって行われるもので,工作機械が工具と工作物との間に適切な相対運動を与えることによって,所望の寸法及び形状を持った品物(部品や製品)を作り出すというものである.工作機械による部品や製品の加工は母性原理に基づいている.母性原理とは即ち「工作機械の精度は,これによってつくられる部品精度に転写される」という原理である.加工精度を左右するものはこの相対運動の精度であるから,理論上では,工具と工作物との間に理想的な回転運動を与えれば理想的な直線物が,理想的な直線運動を与えれば真円状のものができるはずである.しかし実際には加工に伴って発生する力,熱,振動等がこの相対運動の精度を乱す為,所望の寸法及び形状を持った品物を作り出すことは不可能である.そうした状況を踏まえて,それでもなおできるだけ高い精度を維持させるためには,工作機械の運動精度自体にも考慮する必要が生じるのである.前述した母性原理の通り,工作機械によってつくられる部品の精度はその工作機械の精度と同等またはそれ以下である.言い換えれば工作機械によってつくられる部品の精度がその工作機械の精度を上回ることはないのである.それ故,機械加工の加工精度を高めるための対策として工作機械自体の精度を高めることが挙げられる.中でも工作機械の運動の精度を高めることで,これによってつくられる部品にも同等またはそれ以下の精度を与えることが可能となる.例えば工作機械や工具の剛性を高めたり,触れ止め,専用固定具などで工作物の等価剛性を補強したりすることで,工作機械の運動精度を高めることが可能となる.特に考慮すべきなのは,工作機械においては主軸回転精度,位置決め精度である.さらに切削抵抗による変形,重量移動による変形が精度に与える影響を考えなければならない.切削工具においては切削抵抗による変形,工具損傷による刃先の後退,前述の熱変形などが精度に影響を及ぼすためこれらについても考慮しなければならない.総じて,工作機械の運動精度をできるだけ高めることで,機械加工の加工精度を高めることができるといえる.
 機械加工の加工精度を高めるための対策として工具摩耗を考える.工作機械の工具の摩耗が大きくなるにつれてその分だけ工具が削られていくため,この工作機械の工具の加工精度は低くなる.平たく言えば,工具の摩耗が大きくなるにつれてその工具の加工精度が落ちる.切削が進むにつれて工具は摩耗し工具形状誤差が変化する.さらに切れ味が低下し切削力が増大する.したがって加工誤差を精度良く予測するためにはこれら2つの現象も考慮する必要がある.工具摩耗は工具切れ刃と被削物とが実際に摺動する(機械の装置などを滑らせながら動かす)距離である実切削距離に依存している.
 工具摩耗の中でも逃げ面摩耗について,特に急激な逃げ面摩耗は,切削速度が高すぎたり耐摩耗性が十分でなかったり,送りが低すぎる場合に発生する.逃げ面摩耗が発生すると仕上げ面の品質低下及び公差を維持できなくなる.このため逃げ面摩耗はなるべくなくすようにする必要がある.対策としては切削速度を下げる,より耐摩耗性の高い材種を選定する,送りを上げる,といった方法がある.逃げ面摩耗に限らず工具摩耗を抑える方法の例として,切削油剤などで工具や工作物を冷却する,冷却装置などで工作機械の発熱部分を冷却する,工具摩耗の少ない工具を利用する,工具摩耗が小さくなるような切削条件を選定する,などといった方法がある.総じて,工具摩耗をできるだけ抑えることで,機械加工の加工精度を高めることができるといえる.
 最後に機械加工の加工精度を高めるための対策として加工歪を考える.加工歪は様々な要因で発生する.主に熱処理をした場合や,溶接による歪みなどが挙げられる.以下では例として焼き入れを挙げる.焼き入れとは金属の加工方法の一つで,金属の熱処理操作において金属を高温に加熱したのち急冷することで金属の組織を変えることである.主に鋼の硬度を高めるために行われる.焼き入れで歪む原因は,変態応力と熱応力によるものである.まず変対応力は理論的に体積の増減が発生するためこれを皆無にすることはできない.また熱応力は変態を伴わず,熱の変化だけで歪みが生じる現象である.加熱と冷却をするだけで鋼は伸縮することからこれも防止をすることはできない.焼入れ時の歪みはこの2つが複合して生じる現象である.ここでは,焼き入れはオーステナイト状態に加熱した鋼を急冷しマルテンサイトという組織を得ることを指す.この時鋼は,冷却及び加熱によって,組織変化と体積変化を起こしている.ここで焼き入れ時の炭素の動きが重要になってくる.焼き入れをすると組織炭素が格子に入り込み,閉じ込められたままになる.これによって格子に歪みが発生する.そして格子に歪みが発生することにより,鋼は硬くなる.この他にも熱処理をする際にはいくつかの原因がある.例えば材料の内部の組織の不均一さに起因するものがある.また最近の機械加工においては技術の進展がめざましく,重切削が普通であり,それが故に加工面に残留応力が発生し,熱処理はこの加工応力も背負って処理することとなる.焼き入れ時の歪を防止するための対策法としては,材料の改善や前処理の実施,製品形状の改善,熱処理条件の改善、加熱・冷却方法の改善などが挙げられる.材質の改善では,焼き入れ性の良い材料を使用することで冷却速度を緩和させ,熱応力を低減させるといった方法や,材料の目の方向を知り,目的にあった取り方をするなどして,材料取り方法を検討するといった方法がある.前処理の実施では,具体的には焼きならし,調質,荒加工後の応力除去などを実施することで,素材の内部応力組織の不均一さの除去や加工応力の除去をするといった方法がある.製品形状の改善では,例えば対象形状にして熱処理後に加工することで,均一加熱となるように肉厚の変動を小さくし,改善することができる.また長尺材のように曲がりやすいものは短く分割することで一本あたりの変形を小さくするなどといった方法もある.熱処理条件の改善では歪をできるだけ低減する熱処理条件を検討してそれに変更するといった方法がある.加熱・冷却方法の改善では,均一加熱とだれの防止(具体的には部分間隔,対熱源位置や部品支持の仕方に注意するなど),徐加熱の採用(具体的には適正な予熱を行うことでできるだけ徐々に加熱するなど),均一冷却方の実施(具体的には冷却材の流れを均一にするなど)といった方法がある.
 機械加工の加工精度を高めるための対策として加工歪も考慮しなくてはならない.加工歪によって精度が落ちるからだ.加工時の歪は機械加工の加工精度に影響を及ぼす.以上,機械加工の加工精度を高めるための対策としてどのような方法があるのかについて,順に力変形,熱変形,工作機械の運動精度,工具摩耗,加工歪を関連させて記した.
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2017年12月1日(金)
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